離婚の際には、離婚できるかどうかだけでなく、①未成年の子どもの親権、②養育費、③慰謝料、④財産分与など、さまざまな事柄が問題となってきます。このような問題は、離婚後の生活や子どもの生活に大きく関係してきますので、慎重な判断が必要です。夫婦の話し合いで解決できるのであれば問題ありませんが、子どもの親権や養育費などで争いがあるケース、慰謝料請求、財産分与といった財産がからむケースなどは、早期に弁護士に相談され、場合によっては示談交渉や調停申し立て等を依頼することをおすすめします。
【解決具体例】
夫45歳会社員、妻40歳パート、未成年の子ども2人、財産としては住宅ローンが残っている土地建物がある(登記名義は夫)という夫婦で、夫が長期間不貞行為を続けついに家出して別宅で女性と同棲生活を始めたために妻が離婚を求めたケースで、妻は最初自分で調停を申立てたが調停不調になり、弁護士を依頼して夫に離婚訴訟を提起しました。
その結果、子ども 2 人の親権者は妻に、夫が払う養育費は 1 人 3 万円で合計 6 万円、自宅については妻が財産分与として土地建物全部を取得することができる和解が成立しました。住宅ローンについては、妻が実家の援助を得て支払いを継続することになり、自宅で子ども 2 人と生活することができるようになりました。
離婚する為の手続き
離婚するための手続としては、以下の3つがあります。
1. 協議離婚
夫婦の話し合いによる離婚です。話し合いがまとまれば、離婚届を市役所に提出し、離婚が成立します。
2. 調停離婚
家庭裁判所に調停を申し立て、調停委員が双方の意見を聞いて、助言を行い解決を図るものです。調停での話し合いがまとまれば調停調書を作成します。離婚は、調停成立の日に成立となります。
3. 裁判離婚
調停でも協議が整わなかった場合の判決による離婚です。離婚が認められるには、民法で定められている離婚原因(不貞,悪意の遺棄,婚姻を係属し難い重大な事由など)が必要となります。裁判では、離婚原因に該当する事実について十分な主張、立証が必要となってきます。裁判で、離婚の請求が認められれば離婚が成立します。
離婚に伴って問題となる点
主に問題となるのは、①親権者、②養育費、③財産分与、④慰謝料、⑤離婚までの婚姻費用の分担、⑥面会交流(離婚までは面接交渉)、⑦年金分割です。
1. 親権者
未成年の子どもの親権者です。これを決めなければ離婚できません。また、親権者でない配偶者も子供にとっては親であることに変わりはありません。そのため、離婚後、どのように子供と面会をしていくか(面会交流)が問題となる場合もあります。
2. 養育費
子を監護、養育する場合に求める費用です。調停等では、概ね18歳か20歳まで、一月あたりいくらにするかを決めることが多いです。養育費の額については、東京家庭裁判所が公表している養育費算定表が参考となります。
裁判所のホームページ⇛
http://www.courts.go.jp/tokyo-f/vcms_lf/santeihyo.pdf
3. 財産分与
婚姻中に夫婦で築いた財産の清算方法のことをいいます。現金、預金、有価証券類、不動産、退職金、年金などに加え、借金などの消極財産も清算に含まれます。離婚後2年で時効消滅します。また親から譲り受けた財産等は特有財産といって、財産分与の対象になりません。
4. 慰謝料
精神的な苦痛を被った場合の損害賠償です。浮気が原因で婚姻関係が破綻して、離婚に至ったような場合が典型例です。ただ、立証が難しい場合も多く、慰謝料についても、弁護士に相談するのがよいでしょう。
なお、離婚後3年で時効消滅する(離婚慰謝料の場合)しますので、注意してください。
5. 婚姻費用
離婚の協議中や裁判中であっても、婚姻費用(生活費)の分担義務は生じます。実際に、離婚の話合いがうまく行かない場合には、調停や裁判などで離婚までの期間が長引くことが多いでしょう。そのような場合には、婚姻費用分担の調停や審判を家庭裁判所に申立てることも検討しましょう。婚姻費用の額については、東京家庭裁判所が公表している養育費算定表が参考となります。
裁判所のホームページ⇛
http://www.courts.go.jp/tokyo-f/vcms_lf/santeihyo.pdf
6. 面会交流
親権者・監護者にならなかった親が子に会うための方法として面会交流についても定めることができます。
7. 年金分割
婚姻期間に応じて厚生年金の支給を夫婦間で分割すること。なお,年金分割も2年で時効となるので注意しましょう。
子供の親権
離婚届を提出する際には、未成年の子の親権者を父又は母のいずれとするか指定しなければなりません。親権者をどちらにするか夫婦間で協議を行い、協議が整わないときは、調停の申し立てをします。調停でも協議が整わないときは、判決または審判で親権者を定めることとなります。
調停や裁判で親権者を定める場合
子の福祉を基準として親権者が定められます。具体的には、これまでの監護実績、子どもの置かれることになる環境、子どもへの養育についての考え、子どもへの影響、子の意思など、総合的に判断され、より子の福祉にかなうと判断された方が親権者と定められます。
養育費の額
養育費は、未成年の子が社会人として成人するまでに必要とされる費用です。
離婚をしても、子どもを監護していない親(非監護親)の子どもに対する親としての責任がなくなるわけではありません。
金額については、まず夫婦(代理人)間で話し合いをし、協議が整わないときは、調停で話し合います。それでも決まらないときは、裁判や審判で決めていくことになります。
調停や裁判では東京家庭裁判所が公表している養育費算定表を用いて金額を算出することが多いです。
裁判所のホームページ⇛
http://www.courts.go.jp/tokyo-f/vcms_lf/santeihyo.pdf
慰謝料の額
離婚に伴う慰謝料とは、離婚によって被る精神的苦痛に対して支払われるお金のことです。離婚の際に必ず支払われるものではありません。協議離婚や調停の場合には、相手方との交渉によって決まります。
裁判上は、一定の場合(不貞、暴力、悪意の遺棄など)に慰謝料を認めるのが通常です。裁判での慰謝料の金額は、有責行為の態様、破綻に至る経緯、婚姻期間、家族関係、子の有無など様々な要因を総合的に考慮して決定されます。
財産分与とは?
夫婦が婚姻期間中に協力して築いた財産を、離婚時に原則として「2分の1」の割合で分けることです。基本的には別居時の財産で清算をします。
夫婦が協力して築いた財産であれば、名義が夫婦の一方のみであっても、財産分与の対象となります。例えば、夫名義の預金や家でも、財産分与の対象となり清算が必要です。もっとも、夫婦の一方が相手方の協力なく得た財産(相続財産、贈与など)は、特有財産となり清算の対象とはなりません。
負債もまた婚姻生活の結果生じたものといえるのであれば、その負担の方法について協議が必要となります。住宅ローンや教育ローンについても清算が必要ということになります。
なお,財産分与の請求は離婚後でも可能ですが、離婚の時から2年以内という制限がありますので、注意が必要です。
年金分割とは?
離婚するとき、養育費・財産分与・慰謝料のことは皆さんよくご承知なのですが、忘れがちなのは年金分割です。
基本の枠組み
当事者一方からの請求により、婚姻期間中の厚生年金・共済年金の保険料納付記録を分割する手続です。
年金分割を希望する人は,お近くの年金事務所で「年金分割のための情報通知書」をもらってきて下さい。分割対象期間・夫婦の保険料納付記録・按分割合の範囲などについて情報提供を求めることができるので,離婚手続の前にこの情報を得ておくとその後の手続がスムーズです。
分割の対象は、厚生年金、共済年金(公務員、私立学校教職員)=いわゆる2階部分です。
(例)共働き夫婦で、按分割合が50%だとすると、社保庁は夫の記録の何割を妻に分割すればよいか改定割合を割り出し、その改定割合にしたがって、婚姻期間中の夫と妻の各月の標準報酬月額と標準報酬額が書き換えられます。
①結婚から2008年3月31日までの分
→当事者の合意or裁判手続により按分割合を決める。
②2008年4月1日以降の分
→当事者一方からの請求により、自動的に2分の1に分割される。
分割の効果
自身の受給資格要件に応じて、増えた保険料納付記録に応じた厚生年金を受給できます。
分割請求の方法
請求する人の現住所を管轄する社会保険事務所に分割請求書を提出します(年金手帳・合意に関する公正証書等・戸籍謄本が必要)。
なお,期限は離婚時から2年以内ですから注意が必要です。